不動産・預貯金等の相続手続

不動産登記とは

 世間一般で言われている「不動産の名義を変更する」とは、どのような行為でしょうか。
日本にある土地、建物などの不動産の所有者の名前は、法務局が管理する登記簿に記載されています。
「不動産の名義が自分にある」というのは、登記簿に自分の名前が記載されている状態を言います。
不動産の所有者が変わった場合に、登記簿の記載を今までの所有者から新しい所有者に書き換えることを、いわゆる「不動産の名義変更」といい、法律的には所有権移転登記といいます。

不動産の名義変更はどんなときにするの?

 不動産の名義変更(所有権移転登記)は、いったいどんなときに、行われるのでしょうか。
代表的なものとして、不動産を購入した時、不動産を相続した時、不動産を贈与された(もらった)時があげられます。離婚による財産分与もよく行われます。離婚による財産分与に関しては、住宅ローン等の借主・保証人等の問題も発生します。詳細はお問い合わせください。

 不動産の登記名義を自分の名義に変えておかないと、他人に対して自分が名義を取得したことを主張できません。また、「すぐに不動産を売却・担保提供できない」「不動産名義が無いため信用されない」「不動産の利害関係者から連絡ができない」「当事者が認知症等になってしまい不動産の整理ができない」「相続が複数回にわたって発生して、会ったこともない相続人との交渉が必要になる」等のトラブルが発生致します。
不動産に関する権利を取得した時は速やかに名義変更手続きを行いましょう。

相続による登記

相続による所有権移転登記(相続登記)

 不動産の所有者が死亡した場合において、遺言書が無かったとき、その不動産は民法の規定によって配偶者や子供など一定の親族に相続されます。
 不動産を相続した者は、自分が当該不動産を相続した旨を公示するために登記名義変更(所有権移転登記)を申請します。

相続による所有権移転登記(相続登記)は必須?

 不動産を相続したとしても、相続を原因とする所有権移転登記をする必要はあるのでしょうか?
令和6年4月1日より相続登記が義務化されることが決まり、放置すると過料という制裁金が発生することになりました。
今までは、放置することにより不利益を受けるのは相続人であり、他人に迷惑をかけることはないという判断から、制裁の規定はありませんでした。
しかし、近年、行方不明者が名義人となっている不動産が増加して、社会問題化しているため義務化となりました。
 では、相続登記を放置していた場合どうなるのでしょうか?相続による所有権移転登記を申請せずに名義を故人のままにしておいても、法律上は当該不動産の所有権は相続人に移転しているのです。
さらに、相続による所有権移転登記未了のうちに相続人が死亡した場合、その相続人の配偶者や子供が不動産を相続することとなりますので、当初よりも相続関係がネズミ算式に複雑になります。
相続関係が複雑になれば、相続による所有権移転登記のための手続も複雑化します。
 相続登記をしないで放置しているうちに相続人が何十人にも増えてしまい、遺産分割協議がまとまらず、結局相続登記を諦めてしまった、裁判所での調停等の手続で問題解決まで数年掛かってしまった、というのはよく聞く話です。
 そうなってしまうと、すぐに当該不動産を売却したり担保に入れてお金を借りたりすることは非常に困難になるため、現実には、希望どおりの不動産の処分が出来なくなってしまうと言っても過言ではありません。

 また、仮に何十人かの相続人全員の協力を得ることができ、相続登記を完了できたとしても、登記の報酬は非常に高額になってしまうでしょう。
 以上より、相続登記は、複雑化する前に早く済ませておく必要があることがお分かりいただけると思います。

相続による所有権移転登記(相続登記)の必要書類

相続登記を申請する際には、一般的に次のような書類が必要となります。
第1ステップ:(相続人の確定:戸籍収集)

(1)法定相続人の方“全員”(財産を取得されない方も)

 □①戸籍謄本1通 □②住民票1通(本籍記載) □③印鑑証明書1通 □④免許証・保険証等身分証明コピー1点

 (2)被相続人(ご逝去された方)

 □①死亡記載の戸籍謄本1通 □②戸籍の附票1通(筆頭者・本籍記載) □③除籍謄本・原戸籍謄本  

 ※本籍地市・区役所戸籍課に被相続人の“出生~死亡まで”の“つながる”、“全ての戸籍一式”が欲しい」旨をお伝え頂き、ご取得ください。
 ※本籍地が遠方等の場合、郵送等での取得も可能です。
 ※“兄弟姉妹様”からご相続される場合、“ご両親様”の出生~死亡までの戸籍関係も必要となります。
 ※当方にて職権取得することも可能です。

第2ステップ:(財産の確定:遺産分割協議書に記載する財産)

(1)不動産に関して
 □①権利証 □②固定資産税の納税通知書(封書ごと・又は評価証明書
(2)その他の財産
 □①預貯金 □②有価証券 □③自動車 □④現金 □⑤動産等

第3ステップ:(遺産分割協議内容の確定)

具体的に相続される内容等を、下記ご留意点を参考に、ご検討・お教えください。

(1)“法律上”
 □①遺言書がある場合
 遺言書の内容が優先されます。

 □相続人の中に、“未成年者”がいる場合
 遺産分割協議を行う場合、原則として、家庭裁判所の手続で、“特別代理人”を選任する必要があります。

 □相続人の中に、“認知症等”で、遺産分割の協議内容を理解できない方がいる場合
 家庭裁判所で、“成年後見人”を選任する必要性を検討します。

 □④ご高齢者様へ御名義を変更する場合
 後日の不動産管理、処分のため、お子様等へ“家族信託”として名義変更をしていくことを検討いたします。

 □⑤債務超過等の場合
 家庭裁判所への“相続放棄”を検討します。(三か月の制約あり)

 □⑥紛争性がある場合
 お話合いが纏まらない場合、“家庭裁判所の調停手続き”等のご説明もいたします。ご検討ください。

 (2)“税務上”(適用要件等:税務署・税理士等要確認)
 □①相続した不動産を売却する場合
 ・・その1(居住用不動産の3000万円控除)
 相続人の中に、対象不動産に居住中の方、または被相続人のご逝去時に対象不動産に居住されていた方は、売却益から控除できる可能性があり検討が必要です。

 □②相続した不動産を売却する場合
・・その2(空家住宅特例の3000万円控除)

 被相続人がお亡くなりになり、“空家住宅となってしまった場合”空家を解体して更地にして売却したとき、同様の控除ができる可能性があり、検討が必要です。

 □③前記①②の適用がされる場合(□不動産の売却を希望される方)
 不動産の売却方法・税務申告等注意点が必要です。
 不動産会社様へ、この情報等を正確に伝える必要性を検証します。

 □④不動産を相続した方が、他の相続人へ金銭を支払場合 
 ・・その1(代償金)
 相続人間で、遺産分割協議の内容を調整するため、不動産の取得者から、自己資金でお金を払う(このようなお金を「代償金」といいます。)場合、この支払いには、原則として贈与税は、課税されません。但し、遺産分割協議書へ金額を記載する必要がありますので、注意が必要です。

 □⑤不動産を売却して、他の相続人へ金銭を支払う場合
 ・・その2(換価金)
 ※税務申告・お金を受け取った方全員 
 ※前記居住用3000万控除取扱注意

 □⑥相続税が課税される場合(平成27年1月1日以降ご逝去の場合)
 基礎控除(3000万円+(法定相続人数×600万))を相続財産が超過する場合、相続税の申告の有無等を検証して、税理士へご依頼等を検討します。

銀行預金の相続手続(解約、払戻し)

不動産の相続登記(名義変更)とあわせて、銀行預金等の相続手続きもご対応致します。各金融機関ごとに個別性が強いため、

①相続人が大勢いる
②相続人がご高齢で窓口等の手続が分からない 
③相続人同士が疎遠・遠方
④解約~各相続人への配当まで依頼したい等

手続きが複雑な場合など、ご依頼をいただき、預貯金の相続手続~各相続人様への配当をご対応致します。なお、代表的な金融機関の預貯金の相続手続きは下記のとおりです。内容をご確認頂き、ご自身等でご対応が難しい場合等、ご依頼ください。

銀行預金の相続手続きでは多くの戸籍(除籍)謄本などを使用致します。相続登記に使用した戸籍関係等も再度使用が可能です。手続きが複雑な場合等、是非、ご依頼ください。

銀行預金の凍結

銀行預金口座の名義人が亡くなった事実が分かった場合、銀行はすぐに口座を凍結します。キャッシュカードでの引き出しも不可能となります。
その為、銀行預金の引き出しをするには、遺産分割協議書や遺言書などを提出することにより、預貯金の解約及び払戻手続が可能となります。また、現在は、遺産分割前の一部払い戻し等の手続きもあります。
各金融機関により、その手続に個別性があり、故人のご逝去による深い悲しいみの中、ご相続人様にはストレスのかかる作業となります。
銀行預金の相続手続きは、相続人がご自分で銀行などとのやり取りをするほか、司法書士が代理人となって手続きをすることも可能です。

司法書士への依頼

不動産の相続登記手続と一緒に預貯金の相続手続きをご依頼いただく他、預貯金のみの相続手続のご依頼も可能です。

①被相続人の出生から死亡に至るまでの連続したすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本等の取得
②銀行など金融機関での相続手続きの際に提出する、遺産分割協議書の作成
③銀行からの残高証明書の発行手続
④法定相続一覧図の作成(法定相続情報証明制度の具体的な手続について:法務局 (moj.go.jp)
⑤各金融機関での相続人代理人としての諸手続等全般的な対応を致します。

一般的必要書類

一般的な銀行預金の払い戻し(解約)に必要な書類は下記のとおりです。各金融機関で必要な書類やその有効期限は手続きをする金融機関により取扱いが異なることもあります。