家族信託とは

  信託とは、財産の所有者が、信託行為(遺言・信託契約等)によって、信頼できる人に対して財産を託し、誰かのためにその財産の管理・処分を任せる仕組みを指します。 そして、信託の中でも、信頼できる家族間で行う信託を「家族信託」と呼んでいます。 信託は、生前に利用される制度であり、アメリカ・イギリスでは古くから活用されて来ました。日本でも、近年、認知症対策及び相続対策の中で、財産管理及び遺産承継等の新たな手法として注目されてきています。 なお、家族信託は、信託銀行の遺言信託や投資信託とは異なります。

信託を利用するメリット

1.成年後見制度に代わる柔軟な財産管理を実現できる(認知症対策)

 成年後見制度は、高齢者が認知症等で意思能力が低下した場合に、後見人等を選び、高齢者等を保護するための制度です。 しかし、成年後見人が選任されると、本人の財産(特に不動産)を処分するには、家庭裁判所の監督のもと後見人が管理処分を行い、居住用の不動産は裁判所の許可が必要となってきます。 本人の財産を守るため、制度としては硬直的になりやすく、原則として、「生前贈与などの相続対策」や「積極的な資産運用」ができなくなります。 このような場合、意思能力があるうちに、信頼できる人(信託手続きでは、手続上「受託者」と言います。)に財産を託し、その管理・処分を任せることで、認知症発症後でも柔軟な財産管理を実現することができます。

2.遺言では対応できない資産承継を実現できる(遺言代用機能)

 遺言とは,「どの相続人」に「どの財産」を引き継がせるために行う遺言者の最後の意思表示です。 しかし、遺言は、一代限りの相続にしか効力を持たず、また、遺産の使用目的を指定することも難しいのが現状です。 そのため、「子供の生活のため、毎月一定額を渡すようにしたい」とか「相続人が遺産を使い切れなかった場合、次の受取人まで決めておきたい」といったニーズに応えることができません。 このような場合、信託契約の中で、ご自身の財産を「いつ、誰に、どのような目的のために、どのような財産をあげるのか」を指定することができます。

3.不動産の共有問題に活用できる(共有対策)

 土地・建物などの不動産を共有で持っていた場合、売却や新たな担保設定をするには共有者全員の協力が必要になります。また、複数の相続人で不動産を相続した場合なども同じような問題が生じます。 このような場合、共有者としての権利・財産価値を維持しつつ、管理処分権限のみを同じ受託者に集約させることで、このような問題を回避することができます。

4.会社の事業承継対策として活用できる(後継者対策)

 会社のオーナーが認知症を発症してしまった場合、議決権の行使をすることができなくなり、会社経営に支障をきたしてしまいます。 このような場合、前もって信託を利用することで、配当などの財産的な権利はオーナーに残したまま、自社株の議決権行使は受託者に任せることができ、会社の経営を継続させたまま自社株の承継先を決めることができます。

家族信託のお手続きの流れ

  • 1ご面談によるヒアリング

     財産の内容、家族関係やお客様のご希望等をお伺いします。

  • 2ご提案書及びお見積書のご提示、タイムスケジュールのご案内

     ヒアリングした内容を基に、遺言や信託契約などの方針決定、概算費用、必要書類やタイムスケジュールをご案内します。

  • 3業務委託契約書の締結

     今後の方針や概算費用を確認していただき、契約書の締結をします。

  • 4信託契約書案の作成

     お客様のご希望を基に、遺言書や信託契約書の案文を作成します。

  • 5信託契約書案及び信託スキームのご家族への説明

     信託制度は、将来に向けて継続した関係を作り出す制度ですので、相続人間での相続争いなどのトラブルを避けるためにも、可能な限りご家族のご理解を得ることが大切になります。 そのため、信託契約の当事者だけではなく、ご家族にも家族信託へのご理解・情報を共有していただくため、当職から皆様へお客様(信託手続きでは、手続上「委託者」と言います。)のご意思やお手続きの趣旨をご説明させていただきます。

  • 6公証役場・金融機関・税理士等との事前打ち合わせ

     信託契約書案のご確認後、公証役場に事前に資料を提供して、公正証書の文案の調整と公証人役場の日時等の予約をします。 また、信託口口座の開設の有無の確認のため、事前にお近くの金融機関とお打合せをします。

  • 7公証役場にて、信託公正証書の作成

     指定された日時に、委託者と受託者が公証役場に出向き、公証人の面前で信託公正証書を作成します。当職も立ち会います。

  • 8不動産の信託登記・金融機関での信託口口座の開設

     信託財産の中に不動産がある場合は、信託を原因とする登記手続きを行い、また、金融機関で信託口口座を開設し、信託財産とする金銭がある場合は入金します。ここから受託者による管理が始まります。